病院の特長

病院の特長

過去のアトピーレジデントの声

体験記 2017

私は小児科医でアレルギー専門医も取得しています。アレルギー診療をする小児科医としてアトピー性皮膚炎(以下AD)は診療せざるを得ないですし、食物アレルギーなどの他のアレルギー疾患を診る上でもADのコントロールは非常に大切です。ADのプロアクティブ療法は学会等でもよく耳にしますし、以前から我流ではやっていました。軽症や中等症のAD患者は自分の力でも治せるという自信も持っていましたが、どうしても重症のAD患者のコントロールができない思い、生粋の皮膚科医ではない自分が我流で頑張っていても限界があると感じたため、今回アトピーレジデントとして1年間勉強させていただきました。

 

2017年4月から1年間皮膚科医として働かせていただきましたが、皮膚科に入った時点ですでにたくさんの重症・最重症AD入院患者、外来のADを中心とした患者の担当となっていました。初めに私に与えられた試練は重症AD患者を目の前にして、重症の湿疹部位がどこか見分けることでした。入院してくる患者のほとんどはvery strong以上のステロイドを広範囲に使わなければならない状態でしたが、苔癬化しておりstrongestステロイドが必要な皮膚がどの部位か見分けることが困難でした。自分では真面目に患者さんの視診や触診をしてスケッチをしているつもりですが、上司に相談したり部長回診のときに、大幅な修正を指示されることが多々ありました。何度もやり直しを繰り返すことで1ヵ月程度すれば、概ね苔癬化病変や硬く浸潤をふれる部位というものがわかるようになってきて、徐々に自信もついてきました。この皮膚を観る能力、触って感じる能力というものは重症AD患者を繰り返し診ることで養われる能力で、通常診療だけをしていては中々養われるものではないと思いました。

 

次に苦労したことは成人の入院患者の治療が進んでくると、ざ瘡や毛包炎といったものが多々認められることでした。ざ瘡はステロイド外用薬の副作用ですし、毛包炎は副作用というよりは元々のひどかった皮膚自体に問題がありますが、これらへの対応にも慣れるまでは苦労しました。こういったものをできるだけでないような外用方法を考える、できてきたときの対応方法についても皮膚科では学ぶことができましたが、これは皮膚科以外では中々学ぶことができません。下手をしたらざ瘡や毛包炎と湿疹を勘違いしてしまう先生もいると思います。

 

上記では入院患者についての話をしましたが、私は4か月ほど部長の初診の与診をとらせていただき、その後もできるだけ時間の空いている日は部長の初診を見学するようにしていました。ここではAD以外の患者も多々来られますが、ADの診断や捉え方についても学ばせていただきました。前医からはADとして紹介されてきましたが、乾癬など他の病気であったこともありました。

 

ADであった場合ですが、湿疹がどこから始まり、どのように湿疹が拡大してきて、その患者の中で特に重症の湿疹部位がどこかということを読むことが非常に重要であるということを学ばせていただきました。特に長年困っていた湿疹部位はしつこいですので、強力なステロイド外用薬を長期間必要とします。逆に核となる湿疹部位から拡大してきて攻め込まれてきた湿疹部位は治療がそれほど必要でない場合もよくあります。場合によってはステロイドを塗らなくても、核となる部位だけ治療すれば自然に寛解することがあることも学ばせていただきました。その典型的な例は頭皮湿疹かと思います。頭皮に湿疹の中心があるのに、頭皮の診察をしていないと頭皮から拡大してきて、前額部・耳・頚部などに湿疹が拡大してきているパターンです。こういうケースでは頭皮自体の治療をしないと、いつまでたっても周りに拡大してきた湿疹の改善は見込めません。

 

また湿疹の流れを読むことはステロイド外用薬などで治療をしているときに、通常ではない皮疹を認めたときに、皮疹をどう考えるかの材料としても非常に重要であると思います。湿疹のようにも、他のものにも見える皮疹が残存していたとき、そこがずっと患者さんの困っていた湿疹部位であったなら、やはり湿疹のとり残しである可能性は高くなりますし、むしろ軽いところ何かよくわからない皮疹ができてきたときは別のものではないかなどと考えることができるのです。

 

多くのAD患者はステロイド外用薬で概ね対処できますが、それだけではうまくいかない患者もたくさんみることができました。最重症ADのためCyAを使用せざるを得ない症例もいました。また結節が多発しており難治な症例はステロイド外用薬だけでは治すことが困難であり、紫外線療法を併用することも多々ありました。こういったものも皮膚科ならではのことだと思います。

 

上記ではADについてばかり述べていましたが、意外と皮膚科にも食物アレルギーの患者が受診されることが多くびっくりしました。特に成人の食物アレルギーは小児科を受診しない(できない)ケースが多く、皮膚科に流れることが多いようです。成人の食物アレルギーこそ、ややこしい珍しいケースが多いと感じましたし、小児科医の私も勉強になることは多々ありました。特に多かったのは口腔アレルギー症候群関連であったと思います。他にも慢性蕁麻疹など小児科や内科でも役に立つ病気などいろいろ学べた1年間であったと思います。

 

いろんな医療機関を受診しても治らず、ずっとADで苦しんでこられた患者が羽曳野の皮膚科にきて、きちんと寛解導入やその後の寛解維持ができ、喜んでくれる姿がたくさん拝見しました。これほど患者さんのために働けた1年は医者人生の中でもなかったと思いますし、アレルギー専門家としてADをきちんと診ることができるようになったことは、素晴らしいことだと思います。AD治療に興味のある先生がおられましたら、是非1年間だけでも飛び込んで研修されることをお勧めします。今まで見えなかった世界が見えてきますよ。

 

羽曳野皮膚科 アトピーレジデント 井庭 憲人

 

 

体験記 2019

小児科医がアトピーレジデントとして過ごした皮膚科での経験

川﨑英史(2006年卒)

 2019年4月から1年間当院の皮膚科でアトピーレジデントとしてアトピー性皮膚炎を中心とした皮膚科診療に携わらせていただきました。この1年を振り返ってみると、辛いと思うことも正直ありましたが、その分医師として何十段もステップアップし、診療スキルが格段に上がったと感じられる1年でありました。

 私は小児科医として10年以上小児患者さんの診療に携わってきました。近年アレルギー疾患を有する児童が増加傾向にあることは周知の事実ですが、私自身の外来でもアレルギー疾患で困っている子供達やそのご家族に接することが増えていました。アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などアレルギー疾患をあげれば切りがないのですが、日常生活を送る上でアレルギーを有する児の監護は世の保護者にとっては相当な負担です。特に食物アレルギーに関しては、日々の食事管理をしている保護者の方にとっては大きな負担となっています。順調に食物アレルギーが改善していくお子様は問題ないのですが、なかなか解除が進まないご家庭は非常に大変だと思います。もちろん食物アレルギーに対する介入はしていくのですが、アトピー性皮膚炎のコントロールが不十分で、結果的に食物アレルギーの改善がなかなか得られないお子様もおられ、もどかしさを感じていました。

 アトピー性皮膚炎も軽症であればあまり問題なく介入はできていたのですが、少しでも難治となると「どの程度のランクの薬剤を使用していいのか」「どのくらい継続して使用していいのか」「どこまで様子を見ていいのか」ということへの知識と経験の不足が、結果的に診療に対する自信を持てないということにつながり、ご家族との信頼関係を崩す要因となることもありました。

 小児アレルギー性疾患の根底にある赤ちゃんのアレルギー、特に乳児期のアトピー性皮膚炎への正しいアプローチがアレルギー疾患をもつ子供達を増やさないことに繋がり、それが赤ちゃんの診察をする小児科医に求められる診療技術であると考えるようになりました。

 そうなると、皮膚をしっかり診察するということが求められ、皮膚を専門に診療している皮膚科での研修が必要であると思うようになりました。一つの診療科で10年以上診療してきたところでの転科という判断を下すにはかなり勇気が必要でした。再び研修医と同じ環境に身を置くことへの不安はもちろん、収入などの経済面での不安、家族に理解をしてもらえるかの不安、様々な不安が交錯しましたが、最終的には診療技術のスキルアップを図りたいという思いが強くなり転科を決断しました。もちろんレジデントという処遇になりますので、収入は減りました。しかし、結論を言えば、非常な濃密な1年であり、収入のことは全く気にならないくらいの経験ができたと思います。今後の診療において非常に強力な診療技術を手に入れることができましたし、以前悩んでいた症例にも対応できるだろうと思えるようになりました。アレルギーで苦しむ子供達やそのご家族の負担を少しでも減らすことができるだろうと思えるようになりました。そして何より、その自信を持つことができるようになったことが私自身の医師人生において大きなステップアップになった1年です。

 

 さて肝心の研修内容です。私自身の中で研修期間の1年間は前半・後半に分かれていたと思います。

 前半は成人・小児問わず重症〜最重症のアトピー性皮膚炎の患者さんの入院担当となりました。4月はいきなり最重症アトピー性皮膚炎の患者さんの担当となり戸惑いばかり(皮膚科の診療はポリクリ以来一度も携わって来なかったので当然なのですが)でしたが、これが良かったのだと思います。多数の重症者を担当する中で治療の理念や方針について経験し獲得することができました。また、その中で発生するトラブルシューティング(できれば遭遇したくはないですが・・・)に対応する基本的な考え方を身に付けることができるようになったと思います。成人患者さんはアトピーカレッジと言う約2週間の教育入院を行なって寛解導入を行いますが、日々の変化を毎日の診察の中で体験し、寛解レベルがどのレベルかということを経験することができます。小児はもう少し長めの入院となることがありますが、無治療の状態で湿疹の広がりをまず観察し、その広がり方を把握し、どのように、どれくらいの期間で正常レベルに戻すのかということを日々の診察の中で経験することができました。治療方針については初診の段階でアドバイスをいただきながら決定をし、入院後は寛解に向けての指導を受けながら退院までの治療を継続しました。退院後のフォローアップも徐々に担当するようになりました。前半の半年で相当な知識や経験を得ることができたと思います。

 後半はどちらかというと実践に近いものがあります。私自身が小児科医であることもあり、後半の半年は乳児から20歳前後の青年前期までの患者さんを担当しました。もちろん大まかな治療方針についてはこれまでと同様に片岡部長とディスカッションすることができましたし、自身の判断で治療を開始していくことも増えました。治療方針について悩んでいることがあれば入院後にアドバイスをいただけました。さらに、入院担当だけでなく外来で受診された乳幼児の主治医となり治療にあたることも増えました。結果的に主治医となった患者さんの数が一気に増えて後半の半年間は超多忙となりましたが、これが知識や経験の定着にプラスに働いたと思います。また、アトピー性皮膚炎の診療のみならず、私の本業である小児科医としての子供との関わりを通じて、アトピー性皮膚炎に罹患する子供達とその家族をトータルで診療することができるようになってきたと感じることができました。

 小児科医は、児が抱える疾患のみならず、児を看護する親、児を取り巻く環境までも診察して介入しなければなりません。慢性疾患であるアレルギー疾患は特にその介入が必要であり、その一方で疾患に対する治療方針に確立したものがなければ親御さんとの関係は成立しなくなります。私ははびきの医療センターの皮膚科で研鑽を積み、アトピー性皮膚炎に関する知識と経験を得たことが今後の小児科医人生において大きな財産になったと感じています。

 

私の1日の働き方です。

8時半頃  出勤

午前中   回診・治療(成人患者さんのみ)

        小児は支援学校に行っているので診察不可

午後     外来 結構難治な方も担当するので頭を非常に使います。

        判断に悩むことがあれば部長に相談することも可能です。

夕方以降  回診・治療(小児患者さん)

        小児患者さんはやはり手がかかります。

        その分遅くなることも多々あり

 

火曜日は片岡部長の初診外来があり、部長の診察前に成人小児を問わず予診をとります。これがかなり大変なのですが、同日の外来が全て終了したのちに部長からの指導があります。ここで皮膚科疾患の知識や考え方を学ぶことができたと思います。また木曜日は夕方に回診があり、ここで他の先生方が担当される入院患者さんを一緒に診察することができ、知識と経験がさらに深まります。その後にカンファレンスがありますが、ここでも皮膚に現れる症状からどのように診断していくかを共有することができ知識を大幅に増やすことができました。なお週末ですが、小児科医である私は成人としての当直に組み込まれず暦通りの勤務体系でした。

 

 最後に、アトピー性皮膚炎の治療について困っておられる先生方は是非一度研修を受けられることをお勧めします。目から鱗とはまさにこのことを言うのだということがたくさんありますよ。

 

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