皮膚科
診療の特色
1.皮膚に関するアレルギー性疾患の専門治療を実施しています。
2.特にアトピー性皮膚炎治療に力を入れています。
■ アトピー性皮膚炎
(1)EBM(evidence based medicine; 根拠に基づく医療)の推進
- 混乱するアトピー性皮膚炎治療の現状を解決するために、非科学的な思い込みを避け、データ、根拠に基づく正しい診療を推進しています。
- 過去および現在の患者様の治療成績をふりかえり、よりよい治療方法を検討、実施し、発信しています。
(2)患者教育の推進
- 病気の克服はまず、病気を正しく知ることから。各年齢層に対する患者教育プログラム(乳幼児アトピー教室、アトピーサマースクール、アトピーカレッジ)を実施し、患者様ひとりひとりに“かしこい患者”になっていただき、治療効果の改善、良質のセルフコントロールに大きく役立てています。
(3)乳児から成人にいたる各年齢層の診療を実施
- 豊富な診療経験をもとに、各年齢層に特有の問題を考慮しながら、全年齢層のアトピー性皮膚炎の診療をおこなっています。
- 乳児期の重症のアトピー性皮膚炎は、重症の食物アレルギーの危険因子であり、特に早期に適切なコントロールを行うことが必要です。食物アレルギーにも配慮しながら、指導、治療をおこなっています。
(4)長期的な見通しをもった治療方針の決定
- 当科がめざすのは、症状の早期改善とともに、長期的に安定した状態を(最終的に薬剤を少量で、あるいはほとんど使用しなくても)維持できるようにすることです。悪化の要因を見きわめて、長期的な見通しの中で、治療方針を決定しています。
(5)重症例の治療
- 当科の大きな役割は、他の施設で改善しない、重症例を治療することにあります。重症の患者様におかれては、早い時期に、教育プログラムに参加し、まず病気について理解していただくことがおすすめです。ことに、成人の方は、早期改善のために治療をかねた2週間のアトピーカレッジ入院をおすすめします。
- 重症の方の診療を優先としていますので、軽い症状の方は、地域の医療機関で診療を受けていただくようご協力をお願いします。ただし、症状は軽いが、心配の多い方、社会生活での支障をきたしておられる方などについては、かかりつけ医との連携のもとに対応させていただいていますので、かかりつけ医を通じてご相談ください。
(6)血液病勢バイオマーカーを利用した精密な治療
- 2008年から血液バイオマーカーTARCがアトピー性皮膚炎診療での保険適用となりました。皮膚の炎症は目に見えるものだけではありません。重症の方ほど、改善後の治療薬減量は過不足なく行うことが必要です。当科ではTARCと皮膚所見を合わせて判断することがアトピー性皮膚炎の適切な診療に有用であることに気づき、その方法を全国に発信してきました。当院ではHISCL導入により即日TARCの結果をみることができ、日々の診療に役立てています。
(7)生物学的製剤による治療
- 重症アトピー性皮膚炎に対して2018年から生物学的製剤が保険適用となりました。当科では200例以上(2021年3月末現在)の患者様に治療をおこない、その効果を確認しています。ほぼ全例に有効ですが、効果の出方や併用外用療法の方法は病型によって異なります。高価な薬剤であり、効果が得られた後も継続投与が必要な薬剤ですので、病歴や病型から最善の選択を提案させていただいています。
(8)アトピーカレッジの成果
- 2009年からアトピーカレッジを開始し、2021年3月末までに1800名を超える患者様の入院治療をさせていただきました。重症で入院された方であっても多くの方が早期に安定した状態を取り戻して目標4へと到達されていることを確認し、早期改善と患者教育の重要性を全国に発信しています。
(9)アトピー性皮膚炎の病型による治療の選択
- アトピー性皮膚炎の病状は患者様毎に多彩です。アトピーカレッジ入院によって従来の外用療法のみで大きく改善するタイプ、生物学的製剤を強く勧めるタイプ、入院加療して最重症の皮膚炎を改善させてから生物学的製剤を開始したほうが良いタイプなど、皮膚の病型や重症度によって異なります。これを初期に見極めて、最善の治療を提供することが、患者様個人はもちろん、保険医療全体の経済のためにも、責務であると考えています。
(10)学齢期患者に対する配慮
- 小中学生の入院治療に対しては、院内の府立羽曳野支援学校と提携し、入院中の学校教育が保障されます。
- アトピー性皮膚炎の症状が続いて、不登校等、疾病に伴う学校不適応が生じることが、時に、あります。このような場合は、皮膚の治療と並行して、府立羽曳野支援学校と協力しながら、お子さんの全人的な成長のための支援をしています。
(11)心身医学的対応
- 小中学生以外にも、全年齢層において心身相関に留意した全人的、心身医学的対応が可能です。
■ アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性皮膚疾患
- 重症薬疹の入院加療をおこなっています。
TEN,スチーブンス・ジョンソン症候群の急性期に対しては、迅速な判断のもと、内科とも協力して、ステロイドパルス、血漿交換、ガンマグロブリン大量点滴等によるすみやかな治療をおこなっています。 - 成人の食物アレルギー、薬剤アレルギー、アナフィラキシーの原因精査、指導をおこなっています。
- 接触皮膚炎(職業に起因するものを含む)の原因精査、パッチテストをおこない、治癒、再発予防のための指導をおこなっています。
- 難治性蕁麻疹の治療をおこなっています。蕁麻疹はすべてがアレルギーでおきるわけではありません。アレルギーが疑われるものについてはアレルギー検査を、アレルギーではないが、通常の抗ヒスタミン薬内服のみでは抑制されない難治性蕁麻疹に対しては内服薬剤を組み合わせて加療をおこなっています。それでもコントロールできない難治例では生物学的製剤を併用した治療をおこなっています。また、コリン性蕁麻疹については、アトピー性皮膚炎併発例や不安が増強している例など、それぞれの病態に応じた治療を必要に応じて追加しておこなっています。
■ アレルギー性疾患以外の難治性皮膚疾患
- アレルギー性疾患以外の難治性皮膚疾患(難治性湿疹、紅皮症、脱毛症など)の診療にも積極的に取り組んでいます。
- 水疱症(類天疱瘡、天疱瘡)に対しては、ステロイド全身投与、免疫抑制剤併用、血漿交換、ガンマグロブリン大量点滴等重症度に応じて治療を選択し、入院加療を行っています。
- 発汗異常(無汗症、乏汗症、多汗症)に対する精査、加療も行っています。
- 皮膚悪性リンパ腫、膠原病(皮膚症状を主とするもの)の診療も行っています。
- 地域の皮膚科一般診療の二次、三次的機関として、帯状疱疹、蜂巣炎、難治性皮膚潰瘍等についての、入院加療もおこなっています。
- 皮膚科病床20床(一般病棟16床、小児病棟4床)を有し、ほぼ随時入院加療が可能です。
- 当科は、入院または、患者教育や特殊治療を必要とする重症の方、あるいはアレルギー検査の必要な方等を主として対象としているセンター病院です。軽い症状の方は地域のかかりつけ医で診療を受けていただき、患者教育や検査等の必要な時に、紹介状を持って来院いただくよう、ご協力をお願いします。
医療設備・検査
- 紫外線全身照射設備(UVA+UVB装置,narrow-band UVB装置両方を備えています。)
- エキシマライト(ターゲット型紫外線照射装置)
- 紫外線手足照射器
- イオントフォレーシス(掌蹠多汗症など)
- 皮膚エコー、関節エコー
- Dermascan(表在病変向け20MHz皮膚エコー検査)
- 発汗検査用サウナ
- 皮内テスト
- プリックテスト
- 光テスト
- パッチテスト
- 負荷試験(チャレンジテスト)
- 皮膚生検
診療実績(平成30年度年間症例数)
内訳 | 症例数 | 内訳 | 症例数 |
アトピー性皮膚炎 |
3,964例 | 乳幼児アトピー教室参加者 | 76例 |
接触皮膚炎 |
68例 |
アトピーカレッジ(入院)参加者 |
134例 |
蕁麻疹 |
243例 |
膠原病 |
64例 |
脱毛症 |
8例 | 乾癬 | 106例 |
スタッフ紹介
医師名 | 職名 | 認定医・専門医・指導医 |
片岡 葉子 (かたおか ようこ) |
副院長兼主任部長 アトピー・アレルギーセンター長 |
日本皮膚科学会専門医 日本アレルギー学会指導医 日本心身医学会専門医 |
広瀬 晴奈 (ひろせ はるな) |
医長 | 日本皮膚科学会専門医 医学博士 |
坂本 幸子 (さかもと さちこ) |
診療主任 | |
阿古目 純 (あこめ じゅん) |
レジデント | |
益田 知可子 (ますだ ちかこ) |
レジデント | |
渡邉 祥奈 (わたなべ さちな) |
レジデント |
学会発表(症例報告は除く)
年度 | 学会発表内容一覧(症例報告は除く) |
2012 年 | 学会発表内容一覧 ( PDF ) |
2011 年 | 学会発表内容一覧 ( PDF ) |
2010 年 | 学会発表内容一覧 ( PDF ) |
2009 年 | 学会発表内容一覧 ( PDF ) |
その他
- 韓国教育テレビ公社の取材をうけました。(4/23)韓国では、かつての日本のように、現在、アトピー性皮膚炎の治療が混乱しているそうです。混乱を解決する手助けとする目的で日本でのアトピー性皮膚炎治療の先端的施設が取材されました。当院では、患者教育プログラム、支援学校との連携を中心に取材を受けました。6月に韓国内で放映されました。(日本国内では放映されません。)
- チーム医療の一端を講演しました。第109回日本皮膚科学会総会 スペシャリティーナース講習会 2010.4.18 大阪市アトピー性皮膚炎の看護-患者教育プログラムのマネジメントを通じて-6A病棟看護師 古河貴久子・永瀬昌子・大下真弓
- 第22回日本アレルギー学会春季臨床大会学会アワー 2010.5.8 京都市“アトピー性皮膚炎の治療と管理”重症アトピー性皮膚炎の治療戦略 皮膚科主任部長 片岡葉子アドヒアランスの向上を目指すチーム医療 6A病棟主任看護師 田中謙好
教育プログラム
■ 乳幼児アトピー教室
乳児期の重症のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギー等その後のアレルギー疾患をふやす危険があり、特に早期に改善させることが必要です。しかし、いろいろな情報が混乱して、適切に治療されていない方が少なくありません。乳幼児期のアトピー性皮膚炎について正しく理解していただくため、教室を開いています。知っていただきたい内容が多いので、4回分すべてに参加していただく必要があります。
開催日時 | 金曜日14:00-15:00(各回1時間) |
開催場所 | 院内会議室 |
内容 | 以下の内容について、医師、栄養士、看護師が講義、指導をおこないます。
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対象 | アトピー性皮膚炎をもつ乳幼児の保護者 |
参加資格 | 当科の受診患者を対象としており、事前予約が必要です。教室参加を主目的とした他の医療機関からの紹介も歓迎しますが、参加前に必ず当科外来を受診して事前申し込みをしてください。 |
■ アトピーサマースクール
大阪府医師会の調査では、アトピー性皮膚炎のために学校生活に支障をきたしている児童生徒が少なくないことが指摘されています。学校の夏休み期間中、2週間の入院をして、本人と保護者にアトピー性皮膚炎について正しく理解していただき、症状の早期改善とともにその後も良好なコントロールをしていくための指導をします。入院中は、羽曳野支援学校と連携して、夏休みの学習のお手伝いをするとともに、支援学校での教育相談を受けることができます。
【参加対象】
アトピー性皮膚炎で困っている小中学生本人およびその保護者 (保護者の方々にも出来る限り都合をつけて受講ください)
【入院場所】
7A病棟(小児科病棟)
*参加には事前予約が必要です。皮膚科外来(TEL 072-957-2121 代表)までお問い合わせください。
入院費用については各自治体によって補助が異なります。
高額医療制度もご利用いただけますのでご相談ください
入院中の教育相談・教育支援内容については大阪府立羽曳野支援学校 (TEL 072-958-5000 代表)
に直接お問い合わせください。
■ アトピーカレッジ
成人の方(高校生以上を含みます)を対象とした2週間の教育入院プログラムです。
目的 | 入院治療により症状を早期に改善させます。治療と並行して病気について正しく理解していただくための教育、支援をおこない、再発を防ぎ、長期的に良い状態ですごしていただくための指導をしています。 |
場所 | 皮膚科入院病棟 |
内容 | 医師、薬剤師、看護師、栄養士、臨床心理士がそれぞれ担当の曜日ごとに、アトピー性皮膚炎をうまくコントロールするために、必要な知識、方法などについて講義、指導、支援します。 |
日時 | 2週間サイクルで随時開催しています。重症の症状で緊急に入院される方には、随時参加していただいています。予定入院の場合は、プログラムの内容を、最も理解しやすくするため、サイクル開始週の、木曜日入院をお勧めします。 |
参加資格 | 当科の外来受診患者様を対象としています。教室参加を主目的とした他の医療機関からの紹介も歓迎しますが、入院申し込み手続き等のため、まず当科初診外来を受診することが必要です。 |
■ 医療機関の方へ
当科では、皮膚に関するアレルギー疾患の治療、検査、臨床研究等をおこなっています。特に、アトピー性皮膚炎の治療効果の向上に力を入れています。アトピー性皮膚炎患者様の中には、適切に治療されずに、QOLを損なっている方がまだまだ多く、私達は何とかこの現状を改善していきたいと考えています。現在、治療効果の改善のために最も有効とされているのは患者教育です。患者様に正しく疾患を理解し、良質のセルフコントロールをしていただけるよう、当科では教育プログラムを充実させ、実績をあげています。数多い患者様を支援するためには、地域医療機関との連携が欠かせません。集中した治療と教育の必要な重症の患者様を当科でお引き受けし、症状の改善後、地域に戻って継続していただく地域連携によって、より多くの患者様のQOLを向上させたいと思っています。ご協力いただける医療機関は、地域医療連携室までご連絡ください。また、連携をしていただく医師を対象としたアトピー性皮膚炎に関する公開講座も行っていますので、同様にご連絡ください。