消化器内科
主な診療
早期胃がん
おなかを切らずに内視鏡治療で早期胃がんを切除
当院では、内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)をいち早く導入し、適切で、より安全な治療を日々実践しています。 ESDが登場するまでの早期胃がんの内視鏡治療は、EMR(内視鏡的粘膜切除術)が主に用いられていました。しかし、EMRでは切除できる病変の大きさに制限があり、それ以上の病変だと数回に分けて切除を行うか内視鏡治療ではなく外科手術を行わなければいけませんでした。この問題点を解決し、今まで困難であった「サイズの大きな病変」や「潰瘍を合併する病変」に対しても一括切除する事を可能にしたのがESDです。
内視鏡治療の対象(胃)
内視鏡治療の対象となる胃がんは、ほぼ「粘膜」内にとどまっていると診断された早期胃がんになります。
日本胃癌学会の治療ガイドラインでは、下記2点が内視鏡的治療の基本要件となっています。
- 病変が一括で取れる部位と大きさであること
- リンパ節転移の可能性がほとんどないこと
具体的には下記4つの条件を満たすものが対象となっています。
- 粘膜内癌(胃の表層(粘膜内)にがん細胞がとどまっているもの)
- 病変の大きさが2cm以下のもの
- 分化型癌(がん細胞の形や並び方が胃の粘膜の構造を残しているもの)
- 潰瘍を併発していないもの
さらに、ESDの手技によって病変の大きさや潰瘍瘢痕の有無に関わらず腫瘍の一括完全切除が可能となり、内視鏡的治療の適応はガイドライン病変から適応拡大病変・適応外病変へ広げられつつあります。
適応拡大病変とは…
- 潰瘍性変化を伴わない分化型粘膜内癌で大きさが2cm以上
- 潰瘍性変化を伴う分化型粘膜内癌で大きさが3cm以下
- 分化型粘膜下層微小浸潤癌(SM1癌)で大きさが3cm以下
- 潰瘍性変化を伴わない未分化型粘膜内癌で大きさが2cm以下
上記以外は、適応外病変として原則的には内視鏡治療の適応外ですが、患者様の状態や希望により、医師との十分なインフォームドコンセントの上、選択されることもあります。
治療中に伴うリスク(偶発症)
ESDは従来のEMRに比べ、病変の大きさや潰瘍瘢痕(潰瘍のあと)の有無に関わらず、腫瘍病変の一括切除が可能である反面、手技が煩雑で偶発症が多いという欠点を有しています。
治療の際に起きる可能性があること
- 出血(5%前後)
- 粘膜を切除する際、出血は必ず起こりますが、出血部位を直接内視鏡で観察し、確実に止血しながら施行します。また、出血がなくても血管を見つけた場合には事前に凝固処置をします。
- 穿孔 (5%前後)
- 潰瘍の既往などにより、線維化を起こしている部位などを剥離する際、穴があく場合があります。穴があくと、空気や内容物が腹腔内に漏れて、腹膜炎を起こすことがあります。その場合には、内視鏡的にクリップをかけて縫縮し、ほとんどの場合が絶食・抗生物質の投与で治癒します。
※ 鎮静剤・鎮痛剤など治療に使う薬によるアレルギーや呼吸抑制、副作用が起きる場合があります。上記の偶発症が発生した場合は、適切・迅速な処置を行います。出血や穿孔は多くの場合、内視鏡的な処置で対応できますが、まれに外科的処置や輸血が必要になるケースもあります。
ESDの手順
内視鏡挿入後、下記の手順で行われます。
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1 マーキング内視鏡を胃の中に入れ、病変の周辺に切り取る範囲の目印を付けていきます。
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2 切開粘膜下層に薬剤を注入して浮かせた状態にします。
マーキングを取り囲むようにナイフで病変部の周囲の粘膜を切っていきます。 -
3 粘膜下層のはく離専用ナイフで病変を少しずつ慎重にはく離していきます。
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4 切除完了ナイフを使って最後まではく離するか、最後にスネアを使って切り取ることで病変分の切除が完了します。
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5 切除された病変切り取り回収された病変です。この病変を組織検査に出します。
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6 ESD後の顕微鏡による組織検査切り取った病変は顕微鏡による組織検査を行います。組織検査の結果で、根治しているかどうかを判断し、必要があれば追加治療が行われます。
治療前に「リンパ節転移の可能性が極めて低い」と診断されていても、顕微鏡による検査で病変が粘膜層より深い層にまで達していたり、血管やリンパ管にがん細胞が
入っていることがわかった場合は追加治療(外科治療)が必要となります。
主要検査
内視鏡検査
内視鏡は直接胃や腸を観察し病気の発見や治療を行う、なくてはならない医療技術です。当院の内視鏡チームは、内科・外科など各科外来と連携し、さまざまな病気に対する検査や治療をおこなっています。
内視鏡で病気を「発見」する
内視鏡検査では、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と下部消化管内視鏡検査(大腸ファイバー)があります。
胃カメラでは、口からカメラを挿入し、口→咽頭→喉頭→食道→胃→十二指腸までを直接観察します。
大腸ファイバーでは、肛門からカメラを挿入し、大腸の粘膜の状態を直接観察します。どちらの検査もさまざまな病気を発見することができます。
内視鏡で病気を「治療」する
内視鏡は「みる」だけでなく内部を観察しながら切除を行うなどの治療もおこなっています。以前は開腹手術だった場合でも、進行度によっては、体への負担が少ない内視鏡治療を積極的に行います。回復までも短期間ですみます。
ポリペクトミー・EMR(内視鏡的粘膜切除術)
大腸にポリープが発見された場合、癌化する可能性があるものか診断をおこないます。癌化するリスクのあるポリープはループ状のメスで直接あるいは、病変の粘膜下に液体を注入して病変を持ち上げて切除します(EMR)。
ESD(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術)
早期胃がん・早期大腸がんでEMRでは取り切れないようなサイズの大きな病変や潰瘍を合併する病変に対しておこないます。病変の粘膜の下に液体を注入して病変周囲を削ぐようにして切除します。
止血術
消化管から出血があると、吐血や下血(黒色・赤色便)の症状となって現れます。出血が多い場合は命に関わる場合もありますので、緊急に内視鏡を用いて止血処置を行います。出血の原因となる血管を高周波で焼却したり、特殊なクリップで出血部位を挟み込んで止血します。出血の主な原因は胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが挙げられます。
胃ろう造設術
口から食事のとれない方や上手く飲み込むことができずに肺炎をおこしやすい方などに胃に穴をあけてカテーテルから直接栄養を入れる方法です。内視鏡で位置を確認しながら造設します。
苦しくない胃カメラ検査で早期発見につなげたい
胃カメラというと「苦しかった、つらかった」「もう受けたくない」というマイナスなイメージを持たれる方もあり、大切な検査を敬遠してしまうことも多いのではないでしょうか。必要な検査で病気を早期発見するために、当院ではご希望の方には、鎮静剤で眠っている間に検査をうけていただけることも積極的に行っています。ご希望の方は、お気軽にご相談ください。
大切なのは早期発見・早期治療を心がけること
内視鏡検査・治療は日々進化をつづけていますが、まずは早期発見・早期治療が大切です。日ごろからドックや健康診断で早期発見、気になる症状があれば放置せず受診を心がけ早期治療を心がけてください。
おなかの気になる症状がある、内視鏡検査を受けたい方は当院までお気軽にご相談ください。
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