感染症内科

主な診療

透析治療

  • 結核病棟内に4床の透析用ベッドを確保し、結核の入院治療を受けながら人工透析を受けることができます。
  • 人工透析を受けていて結核を発病された患者さんがおられましたら、ご紹介ください。
透析治療についての注意事項
  • 当センターでは維持透析のみ実施しています。
  • 透析導入前の患者さんはお受けできません。同様にシャント作成、再建術も行っておりません。
  • 退院後はご紹介いただいた医療機関に逆紹介させていただきます。

DOTS

DOTSはDirectly Observed Therapy, Short-courseの頭文字で、WHO(世界保健機構)が提唱する結核対策戦略のブランドネームです。日本語訳は「直接監視下短期治療」もしくは「対面服薬確認治療」ですが、一般的には「ドッツ」と呼んでいます。
DOTSは、(1)感染源として最重要の喀痰塗抹患者の治療を優先すること、(2)患者が薬を飲み込むところを医療従事者が毎回確認すること、(3)結核患者に適正治療(イスコチン:INH、リファンピシン:RFPの2剤に、初期の2ヶ月間はピラジナミド:PZAを加えた6ヶ月初期強化短期化学療法)を提供し、治療経過と治癒を評価すること、(4)抗結核薬の供給体制を整備すること、そして(5)政府はDOTS戦略を断固として指示し、高い優先権を与えることの5つの要素からなり、結核に対抗できる唯一有効な戦略とされています。
ところで、結核治療の初期2ヶ月は病状が重く、薬剤耐性を獲得する可能性があり、そして他の人への感染の危険性があります。我が国ではこの間は入院治療を受けるのが一般的です。結核病院では看護師による服薬確認と結核に関する患者教育を行っており、これを「院内DOTS」と呼んでいます。

非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)

チール・ネールゼン染色法で赤く染まる細菌はすべて抗酸菌と呼ばれます。現在、150種類以上の抗酸菌が分離されており、そのうちヒト型結核菌(M. tuberculosis、M. africanum)、ウシ型結核菌(M. bovis)、M. microtiの4種類を除外した残りの抗酸菌を一括して非結核性抗酸菌(非定型抗酸菌)と称し、これらの菌による感染症が非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)です。非結核性抗酸菌(非定型抗酸菌)はヒトに対して病原性の有る菌と無い菌があり、また菌種によって治療方法が異なりますので、喀痰等から抗酸菌を検出した時は菌種同定検査が必須です。

主要検査

結核菌検査

核酸増幅法検査、液体培地法、迅速薬剤感受性試験法など最新の結核菌検査方法を導入し、喀痰塗抹陽性の90%以上は30日以内に結核菌の検出・同定ならびに薬剤感受性試験成績の報告が可能です。塗抹陽性検体に関しては、治療方針の根幹に関わるRFP(リファンビシン)の耐性遺伝子変異を迅速にチェックしています。

核酸増幅法検査

当院ではLAMP法(loop-mediated isothermal amplification)を行っています。喀痰等の臨床検体を用いた時の感度は、菌量の多い塗抹陽性検体ではほぼ100%、菌量の少ない塗抹陰性培養陽性検体では80%程度、特異度は95%以上です。
現在、DNAを増幅するPCR法(Amplicor Mycobacterium Tuberculosis Test)とRNAを増幅するMTD法(Gen-Probe Amplified Mycobacterium Tuberculosis Direct Test)の2種類が利用可能です。当院ではPCR法を行っています。いずれも喀痰等の臨床検体を用いたときの感度は、塗抹陽性は95%以上、塗抹陰性は40~77%で、特異度はともに95%以上です。本検査の感度は培養に比べると若干劣ります。しかし、卵を主体とした固形培地を用いた培養検査では結核菌を検出するには3~8週間が必用ですが、核酸増幅法検査は24時間以内に結果が判明します。そして、塗抹陽性検体での結核菌と非結核性抗酸菌の鑑別に有用であり、結核症の迅速診断に広く利用されています。

液体培地法

喀痰などの臨床検体を培養して結核菌を検出するためには、従来は卵を主体とした固形培地を用いていました。この固形培地を用いた培養では3~8週の長時間を必用とします。そこで結核菌の発育に適した液体培地(MGIT:ミジット、Mycobacterium growth indicator tube)が開発されました。MGITを用いますと、喀痰塗抹陽性であれば1~2週間で結核菌を検出できます。ちなみに当院での喀痰塗抹陽性33例の培養所要日数は平均7.3日±2.7日で、最短は4日、最長は15日でした。

迅速薬剤感受性試験法

従来の結核菌の薬剤感受性試験は卵を主体とした固形培地を用いていましたが、この方法では3~4週の長時間が必用です。一方、最近開発された液体培地を用いた感受性試験法は1週間で結果が出ます。当院では迅速薬剤感受性試験法のブロスミックMTB-1法を行っています。ちなみに、喀痰塗抹陽性33例の培養所要日数は平均7.3日±2.7日で、結核菌検出から薬剤感受性結果の報告に要した日数は平均13.4日±5.6日でした。したがって、検査開始から薬剤感受性試験の報告までの所要日数は平均20.7日です。喀痰塗抹陽性であれば、その90%は1ヶ月以内に結核菌の同定と薬剤感受性結果を報告できます。